第30話「コイルはでんきネズミのユメをみるか!?」と、1997年10月21日の記憶。

第1-82話(カントー編)

秋も深まり、夕暮れの空気がひんやりと冷たさを増してきた10月下旬。
火曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、無機質な工業都市で起きた「少しドライでSF的な恋の錯覚」を見つめていた。


第29話「かくとうポケモン! だいバトル!」と、1997年10月14日の記憶。
秋の風が冷たさを増し、夕暮れの早さに少しの寂しさを感じ始めた10月中旬。火曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、リング上の熱い戦いと「才能を信じて手放す」という大人の愛情に触れていた。あの日、僕たちが受け取ったもの第29話は、格闘ポケ…
第31話「ディグダがいっぱい!」と、1997年10月28日の記憶。
10月も終わりに近づき、木枯らしの冷たさに冬の足音を少しずつ感じ始めた火曜日。僕たちはブラウン管の前で、人間の身勝手な開発と、それに抗う小さな命たちの「無言のストライキ」を見つめていた。あの日、僕たちが受け取ったもの第31話は、アニポケにお…

あの日、僕たちが受け取ったもの

第30話は、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を捩った秀逸なタイトルが示す通り、無機質な物理法則と生き物の滑稽さをシニカルに描いた異色作である。舞台となるグンジョウシティは、スモッグに覆われ、海がヘドロで汚染された工業都市。高度経済成長の負の遺産ともいえる公害問題が背景にあり、そこから大量発生したベトベターやベトベトンが街の機能を停止させるという、重厚な社会派のテーマが敷かれている。

しかし、物語の軸となるのは、風邪(帯電症)になってフラフラのピカチュウに、コイルが「恋」をして付きまとうという奇妙なロマンスだ。コイルはピカチュウを助けるために仲間を呼んでベトベトンを撃退し、見事なヒーローぶりを見せる。ところが、ピカチュウの帯電症が治って溜まっていた電気が放電されると、コイルはすっと興味を失い、振り返りもせずに去っていくのだ。

コイルがピカチュウに惹かれていたのは、感情的な「愛」ではなく、単なる電気的な「引力」であったというドライな結末。それは、人間関係における「条件付きの好意」や「錯覚」のメタファーとも取れる。感情と物理法則の境界線をユーモラスに描き、最後にゲットしたベトベトンをオーキド博士に送りつけて臭がらせるというオチまで含め、初期アニポケのシニカルな遊び心が詰まった傑作であった。

🕰️ 1997年10月21日 のタイムカプセル

あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。

当日の重大ニュース

  • アジア通貨危機の波及と香港株暴落:直後の1997年10月23日、香港市場で株価が大暴落(ブラックサーズデー)。夏から続いていたアジア通貨危機が本格的に波及し、世界同時株安の引き金となった。日本経済にも暗い影を落とした歴史的な出来事である [1]。
  • 臓器移植法の施行:直前の1997年10月16日、脳死を人の死と認める「臓器移植法」が施行された。長年の倫理的議論を経て、日本の医療史における極めて重大な一歩を踏み出した時期である [2]。
  • 探査機カッシーニの打ち上げ:1997年10月15日、アメリカ航空宇宙局(NASA)などが共同開発した土星探査機カッシーニが打ち上げられた。宇宙の未知なる領域への挑戦が、ニュースで大きく報じられていた [3]。

今週の音楽チャート(トップ3)

  • 1位:White Love/SPEED
  • 2位:Liar! Liar!/B’z
  • 3位:キャンドル・イン・ザ・ウインド 〜ダイアナ元英皇太子妃に捧ぐ/エルトン・ジョン
    (1997年10月27日付オリコンチャートより推計)
    SPEEDの最大のヒット曲となる「White Love」が初登場首位を獲得し、冬を前に日本中を席巻。B’zのデジタルロックやエルトン・ジョンの追悼曲が上位に並び、J-POP黄金期の秋をドラマチックに彩っていた [4]。

街で流行っていたもの

  • SPEEDの熱狂とファッション:10代の少女たちによる圧倒的なパフォーマンスに日本中が熱狂。彼女たちのルーズなストリートファッションや厚底靴を真似る若者が街に溢れていた。
  • 携帯型育成ゲームの成熟:たまごっちやデジモンといった電子玩具が、ブームのピークを過ぎて「定番の遊び」として完全に定着。ランドセルに忍ばせて学校に通うのが小学生の日常風景となっていた。

あの日の続きを、もう一度。

電気的な引力が生み出した、奇妙でドライな恋の錯覚。そして、ヘドロの街を救った無機質なヒーローたち。大人になった今、あの日のスモッグに包まれたグンジョウシティの物語を、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第30話を視聴する(Amazon Prime Video等)]


Sources(出典リスト)

[1] アジア通貨危機 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E9%80%9A%E8%B2%A8%E5%8D%B1%E6%A9%9F
[2] 10月16日は「グリーンリボンデー」です – 日本臓器移植ネットワーク: https://www.jotnw.or.jp/news/20191016_454.html
[3] カッシーニ – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%8B
[4] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1997年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1997%E5%B9%B4

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