第70話「しょくぶつえんのクサイハナ」と、1998年10月29日の記憶。

第1-82話(カントー編)

秋も深まり、夕暮れの早さと冷たい風に冬の気配を感じ始めた10月の終わり。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、他人の期待に応えることよりも「ありのままの自分」でいることの強さと美しさに触れていた。


第69話「なみのりピカチュウのでんせつ」と、1998年10月22日の記憶。
秋が深まり、木枯らしが吹き始めた10月下旬。木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、季節外れの真夏の海と、20年に一度の「伝説の波」に挑むサーファーとピカチュウの熱いロマンに胸を焦がしていた。あの日、僕たちが受け取ったもの第69話は、…
第71話「ポケモン・ザ・ムービー!」と、1998年11月5日の記憶。
11月に入り、木枯らしが吹き抜け、冬の足音が確かな寒さとなって街を包み始めた木曜日の夕暮れ。僕たちはブラウン管の前で、予定調和をぶっ壊す「マヌケな才能」と、映画製作の裏側に潜むカオスな熱量に大笑いしていた。あの日、僕たちが受け取ったもの第7…

あの日、僕たちが受け取ったもの

第70話は、トレーナーの「進化してほしい」という期待と、ポケモンの「進化しない」という意思のすれ違いを描き、最終的に無条件の肯定へと至る極めて教育的なエピソードである。マサラタウンへ向かう途中で植物園に立ち寄ったサトシたち。そこでは、お嬢様のリンドウがパートナーのクサイハナに「リーフのいし」を使ってラフレシアに進化させようとしていたが、クサイハナは石を頑なに拒否し続けていた。リンドウは「私の愛情が足りないから進化してくれないのか」と思い悩むが、それは「進化(成長)することだけが正解である」という大人の思い込みに過ぎなかった。

物語の後半、ロケット団が植物園のしびれ草を狙って襲撃してくる。絶体絶命のピンチの中、クサイハナは「かげぶんしん」や「ソーラービーム」といった高等な技を駆使して、見事に彼らを撃退する。クサイハナは未熟だから進化しないのではなく、クサイハナのままで十分に強く、その姿に確固たる誇りを持っていたのだ。親(トレーナー)が敷いた「こうあるべき」という理想のレールに乗らなくても、子供は自分なりのやり方で強さを身につけている。

「進化しなくてもいい、ありのままのあなたが好き」。クサイハナの本当の強さを知り、無理な進化を強要することをやめて抱きしめたリンドウの言葉。それは、何者かになることを急かされ、他人の期待に応えることに疲れてしまいがちな現代人にこそ深く響く、自己肯定感と無償の愛のメッセージであった。

🕰️ 1998年10月29日 のタイムカプセル

あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。

当日の重大ニュース

  • 横浜フリューゲルスの吸収合併発表(Fの悲劇):まさにこの日、1998年10月29日。Jリーグの横浜フリューゲルスが親会社の経営難により、ライバルである横浜マリノスに吸収合併されることが突如発表された。サポーターや選手に計り知れない衝撃を与え、日本サッカー史に残る悲劇の日となった [1]。
  • スペースシャトル「ディスカバリー」の打ち上げ:同日(現地時間)、アメリカで「ディスカバリー」が打ち上げられ、77歳のジョン・グレン氏が搭乗。宇宙飛行の最年長記録を樹立し、世界中で大きな話題となった。
  • 日本長期信用銀行(長銀)の国有化:直前の10月23日、経営破綻の危機にあった長銀の一時国有化が決定。平成の金融危機が日本経済を大きく揺るがし、フリューゲルスの消滅もまた、この深刻な不況の連鎖の一つであった [2]。

今週の音楽チャート(トップ3)

  • 1位:終わりなき旅/Mr.Children
  • 2位:HURRY GO ROUND/hide with Spread Beaver
  • 3位:ALL MY TRUE LOVE/SPEED
    (1998年11月2日付オリコンチャートより推計)
    Mr.Childrenの活動再開を告げる壮大な名曲「終わりなき旅」が圧倒的な力で首位を獲得。hideの遺作やSPEEDの楽曲が上位に並び、J-POP黄金期の秋が深まりを見せていた [3]。

街で流行っていたもの

  • ゲームボーイカラーの熱狂:前週(10月21日)に発売されたばかりのゲームボーイカラー。クリアパープルなどのスケルトン仕様の本体を学校に持ってくる(あるいは自慢する)小学生が続出していた。
  • 横浜フリューゲルス存続署名運動:10月29日の合併発表直後から、サポーターたちによる悲痛な存続活動が始まり、スポーツニュースやワイドショーで連日その動向が報じられていた。

あの日の続きを、もう一度。

大人の期待というレールを外れ、ありのままの姿で放った眩しいソーラービーム。進化しないことを肯定した、無条件の愛情。大人になった今、あの日の植物園での優しい和解を、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第70話を視聴する(Amazon Prime Video等)]


Sources(出典リスト)

[1] 1998年 美談となった「Fの悲劇」<前編> – スポーツナビ: https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201810260005-spnavi
[2] 日本長期信用銀行 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%95%B7%E6%9C%9F%E4%BF%A1%E7%94%A8%E9%8A%80%E8%A1%8C
[3] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1998年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1998%E5%B9%B4

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