11月下旬。本格的な寒さと共に、社会全体が重く暗いニュースに覆われていた火曜日の夕暮れ。
僕たちはブラウン管の前で、人間のエゴと自然の神秘、そして幻のポケモンを守る孤独な男の戦いを見つめていた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第35話は、人間の欲望が自然界にもたらす悲劇と、それを守るための孤独な戦いを描いた、アニポケ初期を代表する重厚なエピソードである。舞台はサファリゾーン。管理人のカイザーは、かつて幻のポケモン・ミニリュウの噂を聞きつけて押し寄せたハンターたちによって自然が破壊された過去を持ち、人間に対して強い不信感を抱いていた。彼がサトシたちに銃(リボルバー)を突きつけるという過激な描写は、後に海外(アメリカなど)で放送禁止(欠番)となる理由を作ったが、それは彼が「人間の身勝手なエゴ」から自然を守るためにどれほど追い詰められていたかを示す、極めてリアルで切実な演出であった。
ロケット団がミニリュウを狙って湖に潜った際、サトシは自らの危険を顧みず、カイザーと共に湖へと飛び込む。息が続かず溺れかけた彼らを救ったのは、かつてカイザーが守り抜いたミニリュウが進化した、美しいハクリューであった。人間の欲望によって傷つけられた自然が、無私の愛情と自己犠牲の精神を持つ人間にだけ、再びその神秘の姿を見せてくれる。
この物語が優れているのは、サトシたちがミニリュウを「ゲットしない」という選択をした点にある。伝説のポケモンは、図鑑を埋めるためのコレクションではなく、自然界の守護者としてそこにあるべき存在なのだ。ちなみに、この回でサトシはサファリボールで偶然ケンタロスを30匹もゲットしてしまうのだが、海外ではこの回が欠番となったため、「なぜサトシが大量のケンタロスを持っているのか」が長年の謎となったというメタ的な逸話も、今となっては味わい深い。
🕰️ 1997年11月25日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- 山一證券の自主廃業発表:直前の1997年11月24日、四大証券の一角である山一證券が自主廃業を発表。野澤正平社長の「社員は悪くありませんから!」という号泣会見は、バブル崩壊後の平成不況のどん底を象徴する映像として、日本社会に計り知れない衝撃を与えた [1]。
- 北海道拓殖銀行の経営破綻:この約1週間前の11月17日には都市銀行である北海道拓殖銀行が破綻しており、日本経済が「平成の金融危機」という底なしの泥沼に足を踏み入れた。連日ニュースで報じられる重苦しい空気が、社会全体を覆っていた時期である [2]。
- 「ジョホールバルの歓喜」の余韻:11月16日のサッカー日本代表によるワールドカップ初出場決定の熱狂が、暗いニュースが続く日本社会における数少ない希望の光として、依然として街を活気づけていた [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:愛されるより 愛したい/KinKi Kids
- 2位:White Love/SPEED
- 3位:WHITE BREATH/T.M.Revolution
(1997年12月1日付オリコンチャートより推計)
KinKi Kidsの2ndシングルが2週連続で圧倒的な首位を獲得し、ミリオンセラーを記録。SPEEDの冬のアンセムやT.M.Revolutionの凍えるような熱いポップスが、金融不安の暗い空気を吹き飛ばすように鳴り響いていた [4]。
街で流行っていたもの
- たまごっち「オスっちメスっち」の予約争奪戦:年末の発売を控え、通信機能で結婚・繁殖ができる新しいたまごっちの話題が子供たちの間で沸騰。おもちゃ屋での予約券を手に入れるための情報交換が小学生の間で盛んに行われていた。
- ミニ四駆の第2次ブーム継続:アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の人気に後押しされ、フルカウルミニ四駆の改造や大会への参加が、小学生男子の放課後の熱狂的な関心事であった。
あの日の続きを、もう一度。
人間のエゴと、銃を構えてまで幻のポケモンを守り抜こうとした孤独な管理人。そして、恩返しに現れた美しいハクリュー。大人になった今、あの日のサファリゾーンの静かな湖畔を、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第35話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] 山一證券 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%80%E8%AD%89%E5%88%B8
[2] 北海道拓殖銀行 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E6%8B%93%E6%AE%96%E9%8A%80%E8%A1%8C
[3] ジョホールバルの歓喜 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%AD%93%E5%96%9C
[4] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1997年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1997%E5%B9%B4


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