1999年のお正月。真新しいカレンダーと、おせち料理の匂いが漂う元日の夕暮れ。
僕たちはブラウン管の前で、見た目やステータスでは測れない「柔よく剛を制す」バトルの奥深さに驚嘆していた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第79話は、セキエイ大会4回戦を舞台に、ゲームのステータスや相性という「数字」を覆す、アニメならではの生物的なバトル表現が炸裂した名作である。サトシの対戦相手であるカオルコが最後に繰り出したのは、進化前のひ弱なポケモンにしか見えない「マダツボミ」であった。しかし、このマダツボミは只者ではなかった。
フシギダネの突進やピカチュウの電撃といった強力な攻撃を、マダツボミは柳のようにしなやかな体さばきで全て受け流し、まるで達人のような格闘術でサトシの主力ポケモンたちを次々と倒していくのだ。「柔よく剛を制す」。進化しているから強い、相性が良いから勝てるという単純な力比べを否定し、体の構造や特性を極限まで活かすことで強者を打ち破る。その圧倒的な強さと意外性に、当時の僕たちは「こんな戦い方があるのか」と度肝を抜かれた。
しかし、物語の結末はさらに予想の斜め上をいく。マダツボミの格闘術を封じたのは、サトシのベトベトンの「ブヨブヨの体」であった。どんな打撃もスライム状の肉体で無効化し、最後はマダツボミを体全体で包み込んで(のしかかって)勝利を収めるのだ。柔らかな動きを、さらに柔らかな肉体で吸収する。データや数字のぶつかり合いではなく、生命体と生命体の特性が絡み合うこの泥臭い決着こそが、アニポケのバトルの真骨頂であった。
🕰️ 1999年1月1日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- 携帯電話・PHSの11桁化:まさにこの日、1999年1月1日の午前2時、日本の携帯電話とPHSの電話番号が10桁から11桁(090、070など)へと一斉に変更された。通信インフラが爆発的に普及していく中での、社会全体を巻き込む歴史的な大移行であった [1]。
- 欧州単一通貨「ユーロ」の誕生:1999年1月1日、ヨーロッパの11カ国で単一通貨「ユーロ」が決済用通貨として導入された。世界経済の枠組みが大きく変わる、新しい時代の幕開けである [2]。
- 浜崎あゆみの1stアルバム発売:1999年1月1日、浜崎あゆみが1stアルバム『A Song for ××』をリリースし、自身初のオリコン1位・ミリオンセラーを獲得。ここから「女子高生のカリスマ」としての彼女の快進撃が本格化していく [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:Automatic / time will tell/宇多田ヒカル
- 2位:Happy Happy Greeting/シンデレラ・クリスマス/KinKi Kids
- 3位:遠くまで/稲葉浩志
(1998年末〜1999年初頭のオリコンチャートより推計)
15歳の宇多田ヒカルのデビュー曲が驚異的な勢いでチャートを駆け上がり、KinKi Kidsの冬のアンセムやB’z・稲葉浩志のソロ楽曲と競い合っていた。J-POPの歴史が根本から変わる、特異で熱いお正月であった [4]。
街で流行っていたもの
- 電話帳の書き換え作業:11桁化に伴い、大人たちは手帳や携帯電話のメモリ(アドレス帳)の番号を一つ一つ手作業で書き換える作業に追われていた。お正月の親戚の集まりでも、その話題が必ず出ていた。
- ファービーの熱狂:前年のクリスマス商戦で大ブームとなった電子ペット「ファービー」。お正月のお年玉を握りしめ、おもちゃ屋に走る子供たちの姿があった。
あの日の続きを、もう一度。
マダツボミの「柔よく剛を制す」格闘術と、それをさらに上回ったベトベトンのブヨブヨの体。データでは測れない、生物としての特性がぶつかり合う奇跡の決着。大人になった今、あの日の草のフィールドでの激闘を、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第79話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] 携帯電話・PHSの番号11桁化 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%90%BA%E5%B8%AF%E9%9B%BB%E8%A9%B1%E3%83%BBPHS%E3%81%AE%E7%95%AA%E5%8F%B711%E6%A1%81%E5%8C%96
[2] ユーロ – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD
[3] A Song for ×× – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/A_Song_for_%C3%97%C3%97
[4] Automatic/time will tell – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Automatic/time_will_tell


コメント