梅雨空の下、日本中が初めてのワールドカップの熱狂と悔しさに包まれていた6月下旬。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、小さな命の誕生と、愛すべき悪役が見せた「不器用な親心」に胸を締め付けられていた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第50話は、新しい命の誕生を巡るコメディでありながら、「親になることの理不尽さとリアル」を描いた非常に示唆に富んだエピソードである。グランパキャニオンで拾ったタマゴから孵化したトゲピーを巡り、サトシ、カスミ、タケシ、そしてニャースの4人が「誰が育てるか」をポケモンバトルで決めることになる。
この回で最も心を打つのは、ロケット団のニャースの姿だ。彼はタマゴを奪った後、誰よりも熱心に、自分の体温でタマゴを温め続けていた。食事を抜いてまでタマゴを守り、「立派な悪いポケモンに育てるニャ」と語るその姿には、悪役という枠を超えた確かな無償の愛(親心)があった。しかし、彼はバトルでサトシに敗れ、トゲピーを手放すことになってしまう。
そして物語の結末は、さらに理不尽である。バトルで優勝したサトシでも、タマゴを温めたニャースでもなく、トゲピーは「孵化した時に一番最初に見た」カスミを親として選ぶのだ。バトルの勝敗や、それまでの努力の量ではなく、「刷り込み(インプリンティング)」という生命の絶対的な本能がすべてを決定する。努力が必ずしも報われるわけではないという命のシビアさと、それでもカスミの胸で笑うトゲピーの可愛らしさ。ニャースの切ない背中も含め、命を育むことのままならなさを教えてくれた名作である。
🕰️ 1998年6月25日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- W杯フランス大会、日本代表の初ゴール:翌日の1998年6月26日、日本代表はグループリーグ第3戦のジャマイカ戦に敗れ3戦全敗となったが、中山雅史選手がW杯における日本史上初ゴールを記録。骨折しながらも泥臭く押し込んだあの一撃は、日本中を熱狂と涙で包み込んだ [1]。
- Windows 98の発売:まさにこの日、1998年6月25日にマイクロソフトから「Windows 98」(英語版)が発売(日本語版は翌月)。インターネットの一般家庭への普及を決定づける、IT史における極めて重要なマイルストーンであった [2]。
- 金融監督庁の発足:直前の1998年6月22日、大蔵省から金融検査・監督部門を切り離した「金融監督庁(現在の金融庁)」が発足。前年からの平成金融危機に対処するための、行政の大きな転換点であった [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:HOT LIMIT/T.M.Revolution
- 2位:There will be love there -愛のある場所-/the brilliant green
- 3位:ever free/hide with Spread Beaver
(1998年6月29日付オリコンチャートより推計)
T.M.Revolutionの過激な衣装と夏を先取りした圧倒的なパフォーマンスが日本中を席巻。ブリグリの気怠くも美しいロックと、hideの遺作が上位に並び、J-POP黄金期の初夏を鮮やかに彩っていた [4]。
街で流行っていたもの
- 日本代表の青いユニフォーム:W杯での日本代表の激闘を見届け、街中には「炎モデル」の青いユニフォームを着た若者が溢れていた。「ドーハの悲劇」から「ジョホールバルの歓喜」、そして世界との壁を痛感した熱い6月であった。
- 育成ゲームの成熟:トゲピーの誕生に呼応するかのように、現実世界でも「たまごっち」や「デジタルモンスター」といった命を育てる電子玩具が、小学生の日常に完全に定着していた。
あの日の続きを、もう一度。
バトルの勝敗でも、温めた努力でもなく、生命の本能が選んだ親。ニャースが見せた不器用な親心と、切ない背中。大人になった今、あの日のトゲピー誕生のドラマを、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第50話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] 1998 FIFAワールドカップ – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/1998_FIFA%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97
[2] Microsoft Windows 98 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Microsoft_Windows_98
[3] 金融庁 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%BA%81
[4] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1998年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1998%E5%B9%B4


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