第64話「ポケモンサーカスのバリヤード」と、1998年9月24日の記憶。

第1-82話(カントー編)

秋分の日を過ぎ、夕暮れの早さと涼しい風に、季節が完全に秋へと移り変わったことを実感していた9月下旬。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、バトルでもゲットでもない、ポケモンとの「新しい家族の形」にほっこりしていた。


第63話「トキワジム! さいごのバッジ!」と、1998年9月17日の記憶。
秋の気配が深まり、台風の雨風が窓を激しく叩いていた9月中旬の木曜日。僕たちはブラウン管の前で、最後のジム戦という高揚感と、映画で見た「あのポケモン」のテレビ本編への登場に興奮し、そして息を呑んでいた。あの日、僕たちが受け取ったもの最後のジム…
第65話「ルージュラのクリスマス」と、1998年10月5日の記憶。
秋風が心地よく、金木犀の香りが漂い始めた10月上旬の月曜日。本来なら真冬に放送されるはずだった「季節外れのクリスマス」を、僕たちは少し不思議な気持ちで、けれどどこか温かい目で見つめていた。あの日、僕たちが受け取ったもの第65話は、前年末の「…

あの日、僕たちが受け取ったもの

第64話は、サトシの故郷・マサラタウンを舞台に、ポケモンが「戦いの道具」や「見世物」ではなく、人間と日常を共にする「家族」になれることを描いた、極めて平和で優しいエピソードである。サトシたちは帰郷の途中でサーカス団の団長と出会うが、彼は言うことを聞かなくなったバリヤードに手を焼き、あろうことかサトシにバリヤードの着ぐるみを着せて舞台に立たせようとする。

一方で、野生のバリヤードがサトシの実家に現れ、母・ハナコに「バリちゃん」と名付けられる。ハナコはバリちゃんをモンスターボールで捕まえることも、無理に命令することもしない。ただ大らかに受け入れ、美味しいご飯を振る舞うのだ。それに心を打たれたバリちゃんは、自らの意思でほうきを持ち、家の掃除を始め、ハナコの大切な「家族」として居着くことになる。

無理やり芸を仕込もうとして心を閉ざされたサーカス団長と、無償の愛で野生のポケモンを家族に変えたハナコ。この鮮やかな対比は、ポケモンという存在が、人間の接し方次第でどんな形にもなれる鏡であることを示している。サトシが着ぐるみ姿で奮闘するコミカルなドタバタ劇の裏で、アニポケの世界観に「日常を共にするパートナー」という確かな奥行きを与えた、秋の夜長にふさわしい心温まる名作であった。

🕰️ 1998年9月24日 のタイムカプセル

あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。

当日の重大ニュース

  • 日本長期信用銀行(長銀)の破綻危機:1998年9月、不良債権を抱えた長銀の処理を巡り「金融国会」が紛糾。平成不況と金融危機の波が日本経済を重く覆い、大人たちの間に先行きの見えない不安が広がっていた時期である [1]。
  • 和歌山毒物カレー事件の報道過熱:7月に発生した凄惨な事件について、特定の人物への疑惑が深まり、マスコミによる激しい報道合戦(メディアスクラム)が連日繰り広げられていた。この約1週間後(10月4日)に容疑者が逮捕され、日本中が釘付けになる [2]。
  • ドイツ連邦議会選挙での政権交代:この直後の1998年9月27日、ドイツの総選挙でコール首相率いる与党が敗北し、シュレーダー新政権が誕生。16年ぶりの歴史的な政権交代が、国際社会の大きな注目を集めた [3]。

今週の音楽チャート(トップ3)

  • 1位:Sa Yo Na Ra/globe
  • 2位:wanna Be A Dreammaker/globe
  • 3位:冷たい花/the brilliant green
    (1998年9月28日付オリコンチャートより推計)
    小室哲哉プロデュースのglobeが敢行した「4週連続リリース」の第2弾が首位を獲得し、前週の楽曲と合わせて1位・2位を独占。日本中がglobeの音楽に染まり、J-POP黄金期の秋が圧倒的な熱気を放っていた [4]。

街で流行っていたもの

  • globeの4週連続リリース:CDが飛ぶように売れていた時代において、毎週連続で新曲を出すという前代未聞のプロモーションが社会現象に。若者たちは毎週CDショップに通い、彼らの新しいサウンドを追いかけていた。
  • スケルトンデザインの爆発的流行:5月の初代「iMac」発表を皮切りに、中身が透けて見える「スケルトン(半透明)仕様」のアイテムが若者の間で最もクールなデザインとして大流行。翌月に発売を控えた「ゲームボーイカラー」への期待も高まっていた。

あの日の続きを、もう一度。

見世物として無理やり芸をさせられる着ぐるみと、無償の愛に触れて自らほうきを持ったバリちゃん。ハナコの大らかさが教えてくれた、ポケモンとの新しい家族の形。大人になった今、あの日のマサラタウンの優しい日常を、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第64話を視聴する(Amazon Prime Video等)]


Sources(出典リスト)

[1] 1998年の日本 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/1998%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC
[2] 和歌山毒物カレー事件 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E6%AF%92%E7%89%A9%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E4%BA%8B%E4%BB%B6
[3] 1998年ドイツ連邦議会選挙 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/1998%E5%B9%B4%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E9%80%A3%E9%82%A6%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E9%81%B8%E6%8C%99
[4] Sa Yo Na Ra – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Sa_Yo_Na_Ra

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