第61話「ハナダジム! すいちゅうのたたかい!」と、1998年9月3日の記憶。

第1-82話(カントー編)

夏休みが終わり、新学期の教室に少しだけ日焼けした顔が並んでいた9月の始まり。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、華やかな水中ショーと、大切なパートナーを手放す「もう一つの愛情の形」を見つめていた。


第60話「カメックスのしま」と、1998年8月27日の記憶。
夏休みも残りわずかとなり、手つかずの宿題の山と夕立の激しさに夏の終わりを感じていた8月下旬。木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、巨大なカメックスたちを眠らせた「小さな元凶」に笑い、平和な島の騒動に癒されていた。あの日、僕たちが受け…
第62話「ピッピVSプリン」と、1998年9月10日の記憶。
秋の気配が少しずつ色濃くなり、夕暮れの空に秋虫の鳴き声が響き始めた9月上旬。木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、ファンシーな外見に似合わない「泥臭いビンタの応酬」と、壮大なSF的スケールに笑い転げていた。あの日、僕たちが受け取った…

あの日、僕たちが受け取ったもの

第61話は、カスミの故郷であるハナダジムを舞台に、「ポケモンにとっての本当の幸せとは何か」を描いたエピソードである。運動不足で元気がなくなったタッツーのために、大きなプールがある実家へ立ち寄ったカスミ。彼女はそこで、姉たちに押し付けられる形で水中バレエショーの「人魚姫」を演じることになる。

姉たちへのコンプレックス(第7話)を抱えていたカスミが、彼女たちに頼られて堂々と主役を張る姿は、旅を通じた確かな成長の証であった。そしてショーの最中に乱入してきたロケット団を、進化したジュゴンたちと見事に撃退する。このハチャメチャな戦闘すらも「アクション込みのエンターテイメント」として観客に大ウケしてしまうという、初期アニポケ特有の底抜けの大らかさがたまらなく心地よい。

しかし、物語の結末は少しだけ切ない。ショーの大成功により、ハナダジムは半年先まで予約が埋まる大盛況となる。人手(ポケモン手)が足りなくなったジムのため、そして何よりタッツーがいつでも広いプールで泳げるように、カスミはタッツーとスターミーを実家に残して旅を続けることを選ぶのだ。自分の手元に置いておくことだけが愛情ではない。その子が一番生き生きできる場所へ送り出すという、バタフリー(第21話)やオコリザル(第29話)にも通じる「手放す愛」の美学。水槽越しに別れを告げるカスミの少し大人びた横顔は、新学期を迎えた僕たちに、また一つ大切なことを教えてくれたのである。

🕰️ 1998年9月3日 のタイムカプセル

あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。

当日の重大ニュース

  • 北朝鮮によるテポドン発射の衝撃:直前の1998年8月31日、北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン1号」を発射し、日本の上空を通過して太平洋に落下。安全保障上の未曾有の危機として、日本中が極度の緊張と不安に包まれていた歴史的な週である [1]。
  • 平成不況と金融危機の影:前年秋からの金融機関の相次ぐ破綻を受け、9月に入っても景気動向は悪化の一途を辿っていた。大人たちの間ではリストラや不景気の話題が絶えず、社会全体に重苦しい空気が漂っていた [2]。
  • 新学期の始まりと残暑:9月に入り全国の小中学校で2学期がスタート。夏休みの余韻と厳しい残暑が続く中、子供たちは新しい教科書と共に日常へと戻っていった。

今週の音楽チャート(トップ3)

  • 1位:冷たい花/the brilliant green
  • 2位:全部だきしめて/青の時代/KinKi Kids
  • 3位:HONEY/L’Arc〜en〜Ciel
    (1998年9月7日付オリコンチャートより)
    the brilliant green(ブリグリ)の気怠くも美しいロックナンバーが首位を獲得。KinKi Kidsのミリオンセラーやラルクの歴史的ヒット曲が上位に並び、J-POP黄金期の熱気が秋の始まりを彩っていた [3]。

街で流行っていたもの

  • iMacとスケルトンブームの本格化:8月末に日本でもAppleの「iMac」が発売され、その斬新なトランスルーセント(半透明)デザインが話題を独占。ゲームボーイや文房具など、あらゆるものが「スケルトン」になっていくブームが加速していた。
  • 映画『ミュウツーの逆襲』の余韻:夏休みを席巻したポケモン映画第1作。新学期の教室では、前売り券でもらった「ミュウ」の強さや、映画の感動について語り合う子供たちの姿が日常風景となっていた。

あの日の続きを、もう一度。

華やかな水中ショーと、アクシデントすらも笑いに変える大らかさ。そして、大切なパートナーが一番輝ける場所を願った「手放す愛」。大人になった今、あの日のハナダジムでの美しい別れを、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第61話を視聴する(Amazon Prime Video等)]


Sources(出典リスト)

[1] 北朝鮮によるミサイル発射実験 (1998年) – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB%E7%99%BA%E5%B0%84%E5%AE%9F%E9%A8%93_(1998%E5%B9%B4)
[2] 1998年の日本 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/1998%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC
[3] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1998年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1998%E5%B9%B4

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