クリスマス・イヴのイルミネーションが街を彩り、冷たい冬の風がコートの襟をすり抜けていた12月下旬。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、氷の上の不利な状況を逆手に取る「機転と信頼」の熱いバトルに夢中になっていた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第78話は、ポケモンリーグの第2回戦「氷のフィールド」を舞台に、不利な環境を「発想の転換」で乗り越えるサトシの戦術的成長を描いたエピソードである。対戦相手のセイヨは、パルシェンなどの氷タイプに適したポケモンを繰り出し、サトシを追い詰める。氷のフィールドは滑りやすく、ピカチュウは思うように動くことができない。
しかし、サトシはこの「滑る」という最大のディスアドバンテージを、逆に利用する作戦に出る。ピカチュウに「スケートのように滑って戦え」と指示を出したのだ。ゲームのシステムでは「すばやさが下がる」などと処理されがちな地形効果を、アニメならではの物理的な機転でアドバンテージに変えてしまう。ピカチュウは氷の上を華麗に滑りながら相手の攻撃を躱し、見事に勝利を収める。
このエピソードが教えてくれるのは、与えられた環境を嘆くのではなく、それをどう利用するかという「発想の転換」の重要性である。そして、前話のキングラーに引き続き、サトシの無茶な指示に完璧に応えてみせるピカチュウの姿は、これまでの長い旅で培われてきた絶対的な「信頼関係」の証明であった。セオリー通りに戦うエリートたちを、泥臭い絆と現場の機転で打ち破っていくサトシの快進撃は、ブラウン管の前の僕たちに痛快なカタルシスを与えてくれた。
🕰️ 1998年12月24日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- 米英軍によるイラク空爆の余波:1998年12月16日から19日にかけて行われた米英軍によるイラクへの空爆(砂漠の狐作戦)が終了。しかし国際社会には依然として強い緊張が残っており、クリスマスの時期に戦争のニュースが重くのしかかっていた [1]。
- 日本債券信用銀行(日債銀)の国有化と金融不安:12月中旬に日債銀の一時国有化が決定し、10月の長銀に続く大型破綻劇に、日本経済は「平成不況」のどん底を彷徨っていた。大人たちの間ではボーナスカットやリストラの話題が絶えない冬であった [2]。
- 宇多田ヒカルのデビューとR&B旋風:12月9日に『Automatic / time will tell』でデビューした15歳の宇多田ヒカルが、有線放送やラジオを通じてジワジワと社会現象になりつつあった。J-POPの歴史が根本から変わろうとしていた時期である [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:遠くまで/稲葉浩志
- 2位:Happy Happy Greeting/シンデレラ・クリスマス/KinKi Kids
- 3位:Automatic / time will tell/宇多田ヒカル
(1998年12月28日付オリコンチャートより推計)
B’z・稲葉浩志のソロ楽曲が首位を獲得。クリスマス・イヴにふさわしいKinKi Kidsの冬のアンセムがそれに続き、そして宇多田ヒカルのデビュー曲が驚異的な勢いでチャートを駆け上がり始めていた [4]。
街で流行っていたもの
- ファービーとクリスマス商戦:この年の秋にアメリカから上陸した電子ペット「ファービー」が、クリスマスプレゼントの目玉として大流行。どこも品切れ状態で、親たちがおもちゃ屋を奔走していた。
- ゲームボーイカラーの普及:10月に発売されたゲームボーイカラーが、クリスマスプレゼントとして全国の子供たちの手に渡り始めた。カラーで動くピカチュウの姿に、誰もが心を躍らせていた。
あの日の続きを、もう一度。
滑る氷のフィールドを逆手に取った、ピカチュウの華麗なスケート戦法。不利な環境を「発想の転換」で乗り越えた、サトシとポケモンの絶対的な信頼関係。大人になった今、あの日の痛快な氷上のバトルを、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第78話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] 砂漠の狐作戦 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A0%82%E6%BC%A0%E3%81%AE%E7%8B%90%E4%BD%9C%E6%88%A6
[2] 日本債券信用銀行 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%82%B5%E5%88%B8%E4%BF%A1%E7%94%A8%E9%8A%80%E8%A1%8C
[3] Automatic/time will tell – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Automatic/time_will_tell
[4] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1998年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1998%E5%B9%B4


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