5月末。初夏の風が心地よく、日もずいぶんと長くなってきた木曜日の夕暮れ。
ブラウン管の前で、僕たちは古代のロマンと、完全にコントロールを離れていく「圧倒的な力の恐ろしさ」に息を呑んでいた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第46話は、人間の探求心という名の欲望と、手を出してはいけないアンタッチャブルな大自然の領域を描いた、ジュラシック・パーク的なエピソードである。グランパキャニオンでの化石発掘ブームの中、ロケット団の爆発によって開かれた地下空洞には、絶滅したはずの古代ポケモンたちが生きていた。彼らは人間の支配を一切受け付けず、特に古代の空の王者・プテラはサトシをさらい、圧倒的な脅威として君臨する。
この回で最も印象的なのは、プテラに対抗するためにリザードから進化したリザードンの姿だ。彼はサトシを助けるために進化したわけではなく、空を飛ぶ強者(プテラ)に対する自らの「プライドと闘争心」のためだけに進化し、火花を散らす。親(トレーナー)の命令を完全に無視し、己の意思だけで空を舞うリザードン。それは、子供が親のコントロールを完全に離れ、一個の独立した強者として自立した瞬間の、頼もしさと恐ろしさが入り混じった極めてリアルな描写であった。
最終的に、プリンの歌によって古代ポケモンたちは再び深い眠りにつき、地下空洞は土砂で塞がれる。すべてを白日の下に晒し、ゲットして支配するのではなく、「未知のままそっとしておく」という選択。大自然の神秘に対するアニポケの確固たる敬意と、リザードンという強大な自我の誕生を描いたこの回は、初期アニポケの重厚な世界観を象徴する名作である。
🕰️ 1998年5月28日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- パキスタンの地下核実験:まさにこの日、1998年5月28日、パキスタンが初の地下核実験を実施。同月に行われたインドの核実験に対抗したものであり、南アジアの緊張が極限に達し、世界中が核拡散の脅威に震えた歴史的な日である [1]。
- 若乃花が第66代横綱に昇進:直前の1998年5月26日、大関・若乃花が横綱昇進を果たし、弟の貴乃花と共に史上初の「兄弟横綱」が誕生。若貴ブームが最高潮に達し、日本中が祝賀ムードに包まれていた [2]。
- サッカー日本代表、運命のニヨン合宿:翌月に迫ったフランスW杯に向け、岡田武史監督率いる日本代表がスイスで合宿中。最終メンバー22名の発表(カズ落選)を数日後に控え、スポーツニュースは連日その話題で持ちきりだった [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:ピンク スパイダー/hide with Spread Beaver
- 2位:誘惑/GLAY
- 3位:SOUL LOVE/GLAY
(1998年6月1日付オリコンチャートより推計)
5月上旬に急逝したhideの遺作がミリオンセラーを記録し首位を獲得。GLAYのメガヒット2曲と並び、J-POP黄金期のエネルギーと深い喪失感が交差する、特異で熱い初夏のチャートであった [4]。
街で流行っていたもの
- Windows 98の発表とインターネットへの期待:この時期にマイクロソフトから次期OS「Windows 98」が発表され、一般家庭へのパソコン普及とインターネットの波がさらに加速しようとしていた。
- スケルトンデザインの流行:5月の初代「iMac」発表を皮切りに、ゲームボーイや時計など、中身が透けて見える「スケルトン(半透明)仕様」が若者の間で最もクールなデザインとして大流行していく。
あの日の続きを、もう一度。
古代の王者と、己のプライドのために空を舞ったリザードン。すべてを解き明かさず、そっとしておくという自然への敬意。大人になった今、あの日のグランパキャニオンに眠るロマンを、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第46話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] パキスタンの核実験 (1998年) – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%AE%9F%E9%A8%93_(1998%E5%B9%B4)
[2] 若乃花勝 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%A5%E4%B9%83%E8%8A%B1%E5%8B%9D
[3] 1998年の日本 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/1998%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC
[4] Template:オリコン週間シングルチャート第1位 1998年 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Template:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E9%80%B1%E9%96%93%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E7%AC%AC1%E4%BD%8D_1998%E5%B9%B4


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