木枯らしが吹き抜け、冬の足音が確かな寒さとなって街を包み始めた11月中旬。
木曜日の夕方6時半、僕たちはブラウン管の前で、圧倒的な強者が示した「力ではない強さ」の真髄に、静かな感銘を受けていた。


あの日、僕たちが受け取ったもの
第73話は、ポケモンリーグを目前に控えたサトシに対し、「本当の強さとは何か」という根源的な問いを提示した極めて哲学的なエピソードである。四天王の一人であるシバの強さの秘密を探ろうとするサトシたちだったが、シバは特別な特訓をしているわけではなく、ただ自然の中で野宿をし、ポケモンたちと生活を共にしているだけであった。
物語のハイライトは、暴れ狂う巨大イワークとの対峙である。ロケット団がバズーカなどの武力でイワークをねじ伏せようとして失敗する中、シバは一切の攻撃を行わず、ただイワークの体に触れ、その痛みを感じ取ろうとする。イワークが暴れていた理由は、岩の隙間に小さなサンドが挟まって痛がっていたからだったのだ。シバはサンドを優しく抜き取り、イワークの痛みを和らげることで、見事に彼をゲット(心を通わせる)してみせる。
相手を武力や権力で屈服させるのではなく、相手の痛みに気づき、寄り添い、解決すること。それこそが、四天王という頂点に立つ者の「本当の強さ」であった。ポケモンリーグという「勝敗」を競う舞台へ向かう直前に、この「力なき強さ」の美学を説いたアニポケの奥深さは、大人になった今見返すと、社会におけるリーダーのあり方そのものを教えてくれているように思える。
🕰️ 1998年11月19日 のタイムカプセル
あの日、僕たちが生きていた世界はどんな空気に満ちていただろうか。
当日の重大ニュース
- クリントン米大統領の訪日:まさにこの日、1998年11月19日、アメリカのビル・クリントン大統領が日本を訪問し、小渕恵三首相と会談。日米同盟の強化や、深刻化する日本経済への対応などが話し合われた歴史的な日である [1]。
- しし座流星群への熱狂:直前の11月18日未明、33年ぶりに大出現すると予測された「しし座流星群」の極大を迎え、日本中が夜空を見上げていた。結果的に日本では予想ほどの流星雨にはならなかったものの、空前の天体観測ブームとなっていた [2]。
- ドリームキャスト発売直前の熱気:11月27日の発売を控え、セガの次世代ゲーム機への期待が最高潮に達していた。「湯川専務」の自虐的なテレビCMが社会現象となり、ゲーム業界の覇権争いに社会の注目が集まっていた [3]。
今週の音楽チャート(トップ3)
- 1位:over/EASY SHOW TIME/V6
- 2位:ALL MY TRUE LOVE/SPEED
- 3位:snow drop/L’Arc〜en〜Ciel
(1998年11月23日付オリコンチャートより推計)
V6の初の両A面シングルが首位を獲得。SPEEDの圧倒的なパフォーマンスや、ラルクのロングヒット曲が上位に並び、J-POP黄金期の冬の始まりを熱く、そしてドラマチックに告げていた [4]。
街で流行っていたもの
- 天体観測と流れ星への願い:しし座流星群のニュースを受け、小学生たちは星座早見盤を持ち出し、夜空を見上げる準備を進めていた。宇宙の神秘に誰もが夢を馳せていた夜であった。
- 湯川専務のモノマネ:ドリームキャストのCMの影響で、学校の休み時間には「セガなんてダッセーよな!」というフレーズを真似する子供たちが続出。ゲーム機の発売を皆が心待ちにしていた。
あの日の続きを、もう一度。
武力ではなく、相手の痛みに寄り添うことで鎮めた巨大イワーク。四天王シバが教えてくれた、本当の強さと優しさ。大人になった今、あの日のオツキミ山での静かな教えを、もう一度見つめ直してみませんか。
[公式配信サイトで第73話を視聴する(Amazon Prime Video等)]
Sources(出典リスト)
[1] 歴代米大統領の日本訪問 – nippon.com: https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01332/
[2] しし座流星群 – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%97%E3%81%97%E5%BA%A7%E6%B5%81%E6%98%9F%E7%BE%A4
[3] ドリームキャスト – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%88
[4] over/EASY SHOW TIME – Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Over/EASY_SHOW_TIME


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